ふと思い立って日本一周をまた試みてしまった。せっかくだから全都道府県一筆書でもしてみよう。そんな旅路の11日目。怒涛の移動編。
※この投稿の中に出てくる幾つかのきっぷの購入・運賃の精算方法は必ずしもいつでも可能とは限りません。きっぷは予め、事前に目的地までの分を、乗車時間までの余裕を持って購入しましょう。
※この投稿は以下の投稿の続きです。day10とその前のday9は観光要素が強いので、この投稿とは落差があります。day11を読んだ後はギャップを楽しんでみて下さい。
昨晩
一晩前のことだ。成田空港に遅れて到着した飛行機を降り、なんとか京成電鉄の終電に滑り込めたお陰で成田駅にたどり着いたぼくは、駅前のホテルに立て続けに電話をかけていた。
普段では考えられない量の雪が降ったせいか、何軒か電話をかけても満室とのことだった。これがダメだったらもう24時間営業の飲食店でダラダラ過ごすしかないと、一縷の望みをかけて電話をかけた最後のホテルは空きがあるとのことで、すぐに行くことを伝えた。
感謝の気持ちでJRの構内を横切ったとき、貼り紙が目に入った。
「……1月7日(金)も遅延や運転見合わせが発生する可能性があります」
飛行機が飛ぶかどうかしか気にしていなかったので、天候にまつわる何やかやを深くは調べずに来たが、どうやら、6日はダイヤが乱れに乱れ大変だった様子が伺えた。
気になったのは7日のルート取りである。きっぷはまだ買っていない。特に何もなければ朝6時に乗車して乗り継いでいけば目標地点までたどり着けるはずだ。はずなのだが。
「遅延や運転見合わせが発生する可能性があります」
朝6時に乗車しさえすれば……。
「遅延や運転見合わせ」
朝……6時に……。
朝◯時 千葉県
結局、ダイヤが乱れる可能性を考慮して、少しずつ「巻き」で進むことにした。スタートは4時台後半。そんな時間から走っている列車にこれまで乗ったことはなかったし(夜行は別として)、そもそもそんな時間から運行していることさえ知らなかった。
まずは成田を出発し、成田線で我孫子に向かう。これまで余りなかったが、終点ではない駅での乗り換えだ。乗り過ごしてしまうとわざわざ羽田ではなく成田に着く便を選んでまで通過するのを避けた、東京都に入ってしまう。別に乗り過ごしたくらいで「一筆書失敗」にする、というようなつもりはないし、「観光モード」扱いにして本来降りるはずだった駅まで戻れば良いのだが、こんなところでロスしたくはない。
我孫子で常磐線に乗り換えて、今度は茨城県の中央くらいにある友部に向かう。社内の電光掲示板には、どこどこ線でしかじかのトラブルが発生し、遅れだ見合わせだというバッド・ニュースばかり流れていた。
茨城県
特に何事もなく、友部からはJR水戸線に乗り換え、栃木県に向かう。ここでトラブルが発生した。列車は急停止する。
「異音」が発生したので列車を一時停止させたのだという。点検が完了するまで、運行できないとのことだ。時刻は7時になったくらいで外はまだ寒い。運転士さんが車両の回りを歩いて点検しているところが見えた。
この列車はワンマン運行なので、当然点検もたった一人で行っている。ぼくだったら、寒いもうやだ帰りたい、という風に思うだろう。運転士さんがテキパキチェックをしてくれたお陰で、列車はわずか15分程度で運行を再開した。
少し遅れたが、概ね問題ない時間に終点、栃木県の小山(おやま)に到着する。
きっぷは予め、事前に目的地までの分を、乗車時間までの余裕を持って購入しましょう。
実は、小山に来るまでに購入したきっぷは成田から190円、1駅分のきっぷしか買っていない。というのも、この先の道筋は新幹線と在来線が入り乱れるので長距離きっぷを作成しようとしていたからだ。
では乗車時に作れという話ではあるが、ここまでのルートでみどりの窓口が開いている乗り換え駅はなかった。なので、事情を説明したところ改めて成田からの長距離きっぷを作成して貰えることになった。
※ここまでの運賃を乗り越し精算して、改札外の窓口で買っても良いのだが短距離で切らない方が基本的に安くなる。
細かいことは省くが、ぼくの求めるきっぷは機械が対応できる経由数の上限を越えているので、1枚のきっぷにするためには半日くらいかけないと作れない(手計算して誰かに確認して貰って……という手順が必要らしい)ものだった。
2枚に分割すればすぐに作れる(但し当初予定していたものよりは割高)ということなので、それをお願いすることにした。……というところまで話が進むのに30分以上はかかってしまった。窓口が複数ある駅で良かったと思う一方、こんな面倒なことに巻き込んで申し訳ないという気持ちも湧く。
例えば、鹿児島中央駅で観光に出る前にお願いしておいて、夕方に受け取るということもできたかもしれない。だが、すぐに作れると思い込んでいたのでその目は結局なかったが。
ちなみに、機械で設定できる経由数の上限は20までなのだが、ぼくの作って貰ったきっぷの経由数を数えてみたところ合計は21だった。……ということは素直に乗り越し精算をして、普通に小山からのきっぷを作って貰えば良かったことになる。
流れに棹差さず素直にしていれば良かったというのは何事にも通ずる教訓である。
宇都宮通行止め事件
小山でピカピカのきっぷを作って貰い、心機一転旅のスタートのような気分で、宇都宮線に乗り、同じ栃木県の宇都宮を目指す。きっぷ作りで時間を大きく費やしてしまったが、流石4時台の始発で出てきただけのことはある、まだまだ余裕だ。
と思っていたのだが、宇都宮の一つ前、雀宮で列車がストップした。車内放送によれば、上野駅での信号トラブルのため宇都宮線が全線ストップしているとのことだ。それだけであれば、直接関係ないので列車を宇都宮まで走らせてしゃんしゃん、と通例はなるようだが今日ばかりはそうはいかなかったらしい。
なんでも、雪の影響でダイヤが乱れた結果、宇都宮駅のホームが全て列車で埋まっている状態になってしまっていて、そこに信号トラブルがあったので他の列車が出ていけなくなり、自分の乗っている車両が宇都宮駅に入れないということのようだ。
どんなバタフライエフェクトだ。
10分程度停まっていたが、とりあえずホームが空いたらしく列車は宇都宮に向けて運行を再開した。
宇都宮駅からは新幹線に乗る予定だった。宇都宮到着時点で新幹線出発まで、3分。周囲と足元をしっかり確認し、自分と周りの人に怪我がないよう、決して走らず急いで歩いて新幹線乗り換えに向かう。
「◯◯◯▲▲▲! あとで精算▲▲▲!」
「■■■☆☆☆! 現金のみ☆☆☆!」
果たして駅員さんと会話が成立していたのか怪しいが、ひとまずぼくは予定通りの新幹線に乗ることに成功したのであった。
トラブルさえなければ普通に新幹線の特急券を買う時間くらいはあったのだが、仕方がない。この乗車駅証明書を貰いながら流れるように新幹線に乗り換える手法も、窓口が混んでいなければこそできる(この券を渡してくれる人の手が空いているときにのみできる)ものなので、この技(というほどのこともない)を使えるかどうかは運次第である。
そんなに日頃の行いがいいとも思えないので、どこかでしっぺ返しが来ないか心配である。
仙台へ
新幹線は福島県を通過し、特にこれと言った遅れもなく山形駅に入る。山形駅からは在来線の仙山線で仙台に向かう。ここからが今回の難所……と思っていたが、素直に通過できた。
この路線の見所の一つが、山寺駅の立石寺だ。松尾芭蕉が、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」という句を詠んだところとしても有名である。天気が良く、車内からでも良く見えた。
仙台駅に到着したのは13時過ぎ。ここらで何か食べておかないと辛かろう。ただし乗り換え待ちの時間は30分程度なのでさっと食べたい。こんな時は駅そばがちょうどいい。
カレーを食べると何かが起こるというのはday5、7で提唱された理論である。うっかり心の準備もなく注文してしまったが、特に何もなかった。敢えて言えば唐揚げが大き過ぎたことと、うどんを食べようとしていたのに指定し忘れてそばが出て来たことくらいだろう。よってこの仮説は棄却された。
仙台~盛岡~秋田~新青森
仙台駅からはこまちに乗って、盛岡駅から秋田駅に向かう。何事も起きず、順調だった。
途中、「バンめし♪」の聖地のひとつ、「桜館」=「角館」に停車。やはり降りたくなったが今回は我慢。(以下参考)
秋田駅に、ほぼ定刻通りに到着。乗り換え待ちの時間で駅ビルの飲食店を見てみたが、海産物、稲庭うどん、比内地鶏等々、誘惑が多かった。しかも、地酒を出していることを売りにしているお店が多く、未練を絶ち切るのに少し苦労した。
ここからは在来線の奥羽本線で新青森まで向かう。新幹線は荒天に強く、一方の在来線は弱い傾向があるため、ここからも今日の難所の一つだ。無事抜けられることを祈りつつ進む。
走る列車に山側から強い風雪が吹き付け、凍結していた。それでも負けずに奥羽本線は走り続ける。
とある駅にて。ホームに雪が積もり始めている。これが酷くなってくると列車の運行に支障をきたしそうだが、まだ問題なく走っていた。
青森~北海道
結果、新青森駅まで大した事件もなく来れてしまった(秋田駅から3時間以上乗りっぱなしではあったが)。10分程度到着が遅れたが、乗り継ぎさえできれば正直なところ誤差でしかない。
新青森から、新函館北斗まで新幹線で向かう。そして観光モードに切り替え、一筆書魂を新函館北斗に置いて函館まで(観光モードがなく一筆書モードしかなければ函館はどん詰まりなので行くことができない)。
ところで、実は今日のルートの途中、ひとときだけ北海道に向かう新幹線に乗っていた(正確には途中まで北海道に向かう新幹線と合体したまま走っていた)。
仙台で乗ったこまちが新函館北斗行きのはやぶさと合体していたのだ。もちろん、これに乗っていれば早く到着してゆっくり過ごせたろうにとか、そういうことを気にしてはいけない。
まとめ
通るも通ったり、1日9県、きっぷ上の距離は約1100km。飛行機を除けば間違いなくこの旅最長の移動距離だ。
ただ、それだけに冒涜感が凄かった。ここまできておいて◯◯しないのか? という自責の念にかられることもしばしば。移動距離と観光は完全にトレードオフの関係にあるので、昨日、一昨日の観光のツケをここで払った形になる。
ただ、言い訳がましい話で恐縮ではあるが、やはり飛行機かフェリーでしかアクセスできない沖縄が絡む以上、「早く先に進めそうだから次の便に乗るね」とできないため致し方ない部分はある(閑散期ならもしかしたら飛び乗れたかもしれない)。
さておき、これで通過道府県は39になった。ほぼほぼ、残りのルートが絞り込める。どのように回ってぼくが愛知県に戻っていくのか、想像することでこの一筆書ゲームの一端でも楽しんでみて欲しい。
このページをかいたひと:藤盛仁輔
ライター。このサイトでは半年で日本二周したときに訪れた場所についてなどをかいています。