ふと思い立って日本一周をまた試みてしまった。せっかくだから全都道府県一筆書でもしてみよう。そんな旅路の14日目にして最終日。とても普通の一日。
※この投稿は以下の投稿の続きです。また、全14日の行程はこれにて終了なので、まだday1から読んでいない人はこの投稿を読んでからでもいいので通して読んでみてください。
東京(八王子)から隣県へ
あなたは知っているだろうか。東京都と山梨県が接していることを。これは多くの人が知っていることだろう。
あなたは知っているだろうか。東京都から山梨県に鉄道を使って行けることを。これもまた多くの人が知っているだろう。例えば特急あずさやかいじで山梨県に行くことができる。
では、あなたは知っているだろうか。東京都から山梨県に鉄道で行くとき、必ずある県を経由しなければならないことを。
そう、ご唱和ください、その県の名は……。
神奈川県
東京都にいて、神奈川、山梨、静岡を一筆書で通り愛知県に戻る。ただし移動は鉄道のみとする、そのような状況下において、通れるルートは1つしかない。
まずは中央線で神奈川県を通る。
八王子、西八王子、高尾。ここまでが東京都だ。
そして次の2駅、相模湖と藤野が神奈川県の駅である。それを越えた上野原から先が山梨県だ。相模湖なんかは名前的に一目瞭然で神奈川県であるが、こんなところに神奈川県が潜んでいるとは気付きにくい。
例えば、「神奈川」「路線図」と検索して出てくる以下のサイトで相模湖を探してみて欲しい(実際に探す必要はない)。
ないのである。ではどこに書いてあるのかと言うと、東京都の路線図に相模湖(と藤野)は書いてある。
まあそう書いてあるのも、仕方がない。仮にこの2駅だけ神奈川県に書かれても離れ小島のようになってしまうし、この2駅から例えば横浜などの都心側に行こうとするとほぼ確実に神奈川県の外に出ないといけない以上、神奈川県の路線図に書いてある必要はないので困る人もいない。
……とお思いだろうが、ここに困る人が一人いるのだ。実は1度一筆書ルートを考えた際にこれを知らずに神奈川→東京→山梨→長野と繋げてしまい、最終的に地図上でルート確認をしたときに神奈川県を2回通っていることが発覚したのである。ぼくはルートの練り直しをした。
そういう訳で改めて組み直したルートで神奈川県を通ることにした。中央線に乗っていれば特に乗り換えることなく、この2駅は通る。神奈川県滞在時間、約10分という記録を打ち立てることも可能ではあったが折角なので相模湖を見に行くことにした。
相模湖駅から徒歩約10分程度で湖岸に到着する。湖を見るだけなら駅からだいぶ近い。少し離れたところにダムや遊園地もあるらしいので、ドライブなんかに良さそうだ。
10分のはずだった神奈川滞在は大体1時間くらいになったが、次に進む。山梨は目の前だ。
山梨県
相模湖で一度降りた路線を乗り直し、甲府に向かう。細かい記憶がないが、乗り換えなどではなく一度降りた路線の乗車を再開する、いわゆるぶらり途中下車るのは、熊本の平成駅以来かもしれない(day7参照。ただしこれは宿のためなので本当に純粋に歩みを止めたのは初かもしれない)。
1時間30分で甲府に到着する。乗り換え待ちは1時間。駅前にある甲州夢小路で、信玄餅のパフェを食べる。
駅前には甲府城もあるので、その天守台まで登る。かろうじて富士山が見えた。この辺りでタイムアップなので駅に戻る。
ここからは身延線で静岡へ向かう。
静岡県
身延線終点(あるいは始点)の富士駅には3時間かけてたどり着いた。静岡県に入った辺りから富士山の圧が凄い。こんなのを日常的に浴び続けてたら鈴木さん(静岡に多い苗字)たち、何かに目覚めちゃうんじゃなかろうか。
富士駅から東海道線に乗ればやがて愛知県に入り、名古屋にたどり着く。このまま帰ってしまってもいいが、せっかくなので少しだけ寄り道をしていく。
清水魚市場に寄った。まぐろを好きなだけ盛ってくれるという豪快な丼。これをいつかは食べてみたいと思っていた。前に静岡に泊まったときは定休日だったので再挑戦である。
残念ながら、まぐろいっぱい丼は売り切れ。祝日の14時過ぎなので仕方がない。次に来るときは開店時間に合わせよう。何事も全てうまくいくとは限らないのも旅の楽しみだ。こういうときのリカバリにこそ、新しいものとの出会いがある。宇和島で頂いた紅マドンナとか(day5参照)。
魚市場には他にもお店があるので、まぐろが空振ったとて問題はない。まぐろ、しらす等のこぼれ丼を頂く。思ったよりもお腹にずっしりきた。満足。
お腹いっぱいで駅に戻り、列車に乗る。これに乗って、あと2回乗り換えるだけで名古屋に着いてしまう。いつまでも旅を続けていたい、日本をもう一周したい、そんな風にも思うがそういうわけにもいかない。
それに、この旅は全都道府県一筆書である。もちろん、同じ点を通らずにスタートとゴールが別々になっているタイプの一筆書もある。だが、スタート地点と同じ場所に線を結んで完結させてこそ、美しい一筆書だろう。
これ以上の寄り道は美しくない。
愛知県
浜松で豊橋行きに乗り換えて、豊橋からは新快速の米原行きに乗る。
名古屋に停車してゴール。これにて全行程終了である。
一筆書魂はぼくから離れ、ただの旅魂になった。縛りが解けたのだ。一筆書魂改め旅魂はそのまま米原行きの列車の中に留まっている。
ぼくが次に旅に出るまでのあいだ、旅魂は各地を走る列車や列車以外に乗って移動し続けるはずだ。
始めの乗り換え地点は岐阜か、米原か。実は大垣も可能性がある。愛知に戻ってくるのは岐阜からか静岡からか、はたまた三重からか。空路や海路で帰ってくる可能性もあるだろう。いつかまた一緒に旅をするときがあれば色々な土産話を聞かせて欲しいものだ。
まとめ
回った。回りきった。これにて全都道府県一筆書をしながらの日本一周は完了である。この行為になにか意味があったのかと問われると答えに窮するが……。
やはり、回ってみて泊まれなかったところに泊まりに行ったりする展望も生じるので、ある意味この先の人生の中で訪れる場所の下見をしたとも言える。
一筆書のいいところは、どこから始めても同じ形になるところだ。ぼくは名古屋から出発したが、例えばこれを読んだ人は自分の住んでいるところの近くから出発することもできる。
……と書いていて思うのが、埼玉、東京、神奈川、兵庫に関してはもう少しメジャーなポイントを通るようにした方が良かったかもしれない、ということだ。……いずれにせよこれを読んで同じようなことをするのかというとしない気はするが……。
人のことはさておき。仮に自分が同じ道筋を辿ったとしても、通る時間帯や宿泊する街をずらすだけできっと今回とは違った出会いが待っていることだろう。逆回りなんてのも可能性を感じる。
そもそも、同じ一筆書ルートにする必要もない。きっとその時にはまた違うルートを考えて実行するに違いない。いつか来るかもしれないその日を楽しみにしつつ、今回の旅に関してはこの辺にしておこう。
(終)
このページをかいたひと:藤盛仁輔
ライター。このサイトでは半年で日本二周したときに訪れた場所についてなどをかいています。