ふと思い立って日本一周をまた試みてしまった。せっかくだから全都道府県一筆書でもしてみよう。そんな旅路の8日目。
※この投稿は以下の投稿の続きです。day7一筆書としては変則的なので、day5、6と併せて読んでも良さそうですがそのままでも十分味がついているのでお好きな読み方をなさって下さい。
熊本県
熊本駅から一駅、平成駅にある有名サウナ湯らっくすで一晩過ごし、出発する。
豊肥線で阿蘇を越え、大分県に至る道だ。
肥後大津駅で乗り換えていよいよ阿蘇に登っていく。この車両は、九州に入ってから色々なところでちょくちょくお目にかかる。九州の鉄道輸送を支えるいぶし銀のスタープレイヤーといった風情だ。
肥後大津駅から2駅、立野駅を出た後にスイッチバックをする。スイッチバックが何なのか分からない人もいるかもしれないが、詳細な説明は例によって省く。山に登るために進行方向を変えつつ登っていく走り方、とでも思っておけば良い。これを行うときには運転士さんが前から後ろ、後ろから前に動くのが何となく面白いところだ。
阿蘇駅を越え、宮地駅に至る。ここでは1時間15分程度の乗り換え待ちが発生するのでいったん駅前を見てみることにした。決してカレーは食べないことを心に誓って(day7参照)。
駅前の看板を見ると、ここ宮地駅が阿蘇神社の最寄り駅になっていることが分かった。ものを知らない(下調べもろくにしない)と様々なところに出会いがあって良い。距離にして大体1kmちょっとなので、お参りして帰ってくるなら丁度いいくらいの時間だと判断してぼくは阿蘇神社に向かった。
楼門は復旧工事中なので、この壁に描かれた楼門を通り過ぎて境内に入っていく。内側は再建が完了しているようで、とてもきれいな拝殿が待っていた。「初詣に参りました!」という顔で世俗にまみれきった願いを祈り、境内を後にする。初詣というのは嘘で2日ほど前に佐賀県唐津の高島にある宝当神社に行っているが(day6参照)、阿蘇神社には初なので初詣で良いだろう。
流石に一の宮というだけあって、門前町の商店街は賑わっていた。元旦や二年参りのときはもっと人が多かったのではないだろうか。
折角だから何か食べようと思っていたところに丁度良く、食べ歩きメニューを取り扱っているお店があった。
馬ロッケかあか牛の串焼きで悩んだが、串焼きは7~8分かかると書いてあったので念のためやめておいた。食べ物のせいで列車の時間に間に合わなくなるような事態をそう何度も引き起こしたくはない。
揚げたてである。看板には「外はサクサク中はホクホク」と書いてあったが、これは嘘だと思った。正しくは「外はサアックサク! 中はハフハフハフ……フォックフォク!」が正しいのではないだろうか。馬肉どうこうと関係なくうまいコロッケだった。
門前町のあちこちに水基と呼ばれる湧き水があり、それぞれ名前が付いているのでそれを見るのも面白かった。
大体ちょうどいい時間になったので駅に戻ることにする。来たときはそれほどでもなかったが、帰る時にはあちこちの駐車場が満杯で、あちこちが渋滞になっていて大変そうに見えた。
駅に到着したのは列車の出発5分前だった。少しゆったり過ごしていたくらいなので、あか牛の串焼きも食べられた気がするが次の楽しみに取っておくことにする。
大分県
阿蘇カルデラを脱出して少しすると、大分県に突入する。豊後竹田駅が大分県初の乗り換え駅だ。列車から降りると荒城の月(歌つき)が流れていた。竹田市は瀧廉太郎の出身地だ。そのメロディを聞きながらホームを見渡すと看板があった……が、もっと凄いものが見えた。
滝である。そんなにたくさんの駅に行った訳でもないが、滝が見える駅というのはかなり珍しいのではないだろうか。
豊後竹田駅から出たあとは、
大分、
臼杵を経由して宮崎県に向かう。なお、ここまで青春18きっぷだけで移動してきたが、臼杵から青春18きっぷだけで先に行くにはかなりの困難を要するので(この説明も省く)、宮崎の右上の方にある延岡までは特急に乗ることにした。なお、こういう技のことを18キッパーは「ワープ」と呼び習わしている。
18きっぷのことを余り知らない人のために念のため簡単に説明しておこう。18きっぷは簡単に言うとJRの普通列車に1日乗り放題のきっぷである。値段的には1日につき2410円(5枚綴りなので購入金額は12050円)だ。従って、1日あたり2410円分は乗らないと少し損ではある。2410円分というと、東京駅基準で言えば高崎や宇都宮辺りでは近過ぎて、水戸、沼津、甲府よりは遠くに行かなければならない。
ちなみに、「これまでの旅路でもし18きっぷを使わなかったら幾ら幾らかかっていた」と言った時に一番高額になっていたのはday3の和歌山~大阪~奈良~京都~鳥取で、正規料金ならば9000円程度かかっていた。
ただ、18きっぷにはかなり大きな弱点がある。それは、特急や新幹線に乗る時はただの紙キレになってしまうことだ。乗り放題だから特急料金を足して~ということはできない。特急料金の他に乗車券を買う必要がある。
だが、それを押してでも特急に乗った方が便がいい場合もあるので、「ワープ」という技が生まれたわけだ。そして、今回の大分から宮崎に抜ける区間と宮崎から鹿児島に抜ける区間がまさにワープ好適区間なのである(なにを好適とするかは各人の考え方による)。
それぞれの区間における乗車券と特急券の合計は2500円程度、1500円程度であるので、元の18きっぷの値段からすると割高ではあるものの、全行程を全て特急で移動するよりはこれと18きっぷを併用した方が当然断然安い。
ただし、頻繁に特急に乗る場合は18きっぷ+ワープよりも長距離きっぷの特性を利用した方がお得な場合があり、例えば……。
宮崎県
……ういうわけで、day4とday5では訳の分からない長距離きっぷを使って駆け抜けたというわけなのである。
と、話している間に県境をまたいで延岡駅。ここからは普通列車に乗り、
宮崎駅で陽気な列車に乗り換えて、
都城駅で県境をまたぐために特急にまた乗り換える。
結果として大分、宮崎は駆け抜けてしまった。便が悪くても食事をしたりして待ち時間を有効活用しながら進んでも良いのだが、やはり宿泊などの利便性(ホテルのリーズナブルさ、インターネットカフェや終夜営業の銭湯の有無、その他諸々)を考えるとなるたけ今日のうちに鹿児島まで抜けておきたくはあったのだ。
大分、宮崎はまた来たい場所ではあるので、またの機会に譲るとして……。
ところで、駆け抜けてきて昼食も採らず(馬ロッケを食べたのは朝のことである)お腹が空かないのかって? よくぞ聞いてくれた! そこで紹介するのは次の品物だ!
大容量の225gなのに300円程度で買えてしまうリーズナブルなお土産、塩けんぴだ。これの凄いところが、なんと! 1袋食べると1000kcalを越えているんだ。1000kcalといったら成人女性の1日に必要なカロリーの約半分。行動食にするにはバッチリってわけ。ただし、少しベタつくのでおしぼりなんかは必須だぜ!
昼以降の乗り換えが忙しくなってしまったときのために、こんなこともあろうかと買っておいたのである。高知県で。なかなか食べるタイミングがなかったので合間合間に消費できて良かった。チャックがついているのも助かるポイント。
安くてボリュームがあるので、小分けを考慮しなくていい相手へのお土産としても最適。おいしいしおすすめ。自宅用としてもいいので高知に行った折にはぜひ。
鹿児島県
特急は鹿児島県に入り、霧島神宮駅を越えて国分駅に到着する。国分駅始発、鹿児島市方面の普通列車に乗るためだ。そのまま特急に乗っていれば鹿児島中央駅まで早く着けるが無理をして早く着く理由もないので、18きっぷの効力で移動するのである。
そのまま特急に乗っているのとわざわざ降りて目的地を同じにする普通列車に乗り換えるのと、どちらが無理をしているのかは議論の余地があるとは思うが。
何しろ今日のゴール地点の鹿児島中央駅から先に行く予定がないのと、特急で着こうが普通列車で着こうが夜9時~10時の到着になるのだから「ワープ」の風情を大切にしてみた。今日のところは。
だが一つ問題があって、どの駅に魂を置いておくのかが決まっていなかった。
国分駅、隼人駅、加治木駅、鹿児島中央駅。このどこから次の地点に「移動」を始めるかが一切決まっていないからである。明日どこに行って何をするか決まっていない以上、決められないというわけだ。特にそういうときのルールが決まっていないので、どこに一筆書魂を置いて観光モードに入るかは後付けで決めて良いことにするしかないだろう。
夕方から外せない予定があるがそれを除いては明日の予定はフリーなのだ。まるで夜シフトに入っている日のようである。
明日の予定は都度都度埋めることにして今日は記録を閉じよう。
まとめ
通ったのは3県追加の28府県となった。残り19都道県を6日で回る計算だ。これまでの道のりで言うと、ギリギリ行けそう、くらいの数と言える。
残るは東日本と沖縄。ここからどのように一筆書するのか、想像して楽しんでみて欲しい。この時点でも可能性は無数にある。明日はその無数の可能性の中から一つを選んで歩を進める予定だ。
このページをかいたひと:藤盛仁輔
ライター。このサイトでは半年で日本二周したときに訪れた場所についてなどをかいています。