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雪国の朝は
高山の駅前のホテルに宿泊したのもつかの間、夜も明けきらぬ間に出発となった。もう少しゆっくり過ごして朝風呂でもキメてからほくほくで出発するというのもなくはないのだが、今日はガンガン進んで行こうと決めていたので仕方がない。
朝風呂は朝風呂で魅力的ではあるが、それ以外にも心残りがある。夜遅くに到着したのでほとんど高山の町を見ていないのだ。後ろ髪はかなりの力で引っ張られていた。
今回の旅はこういうことが多発するだろう。それもこれも一筆書のためであるから仕方ないのである。……仕方ないのである……。
富山県
高山から終点まで行くともう富山県である。サラサラの雪が風に吹かれて舞っていた。寒いとかそういうレベルではない。高山は寒いなあ。と思っていたけれど、余裕でその数段上まで到達してしまった。
そもそも県境というのは地理的に険しい地形になっていることが多いのだろうし、鉄道の営業切替ポイントになっていることも多いだろう。乗り換えの度に自然の厳しさに直面するのも必然に近い。
雪景色の中を走り、富山に辿り着く。乗り換えは10分もない。時間はまだ朝の8時。朝ごはんを食べたかった。頭の中に富山名物が浮かんでは消えていった。
いつかまた食べに来よう、そう誓ってとやま鉄道に乗車する。なお、とやま鉄道はJRではないが、金沢まで突き抜けるなら18きっぷで乗れる区間らしい(後日補足:高岡~津幡間は別途運賃がかかります。これ、JRの職員さんも間違えてた)。
石川県
気付いたら石川県に入っていた。かの有名な倶利伽羅峠のある場所らしい。この路線は駅名表示が車両の中からは見にくい。
牛に火をくくりつけて敵陣に突撃させるというなかなかになかなかなことをやった伝説が残っているらしいが、後世の創作ではないかとネットに書いてあった。もはや真実はどこにあるのか分からない。
あっと言う間に金沢に到着。ハラペコで目が回ってきた。乗り換え待ちは20分くらいあったのでこれは売店で何か買うチャンスではないかと思ったが、ホーム内の売店にはおつまみやお菓子しかなかった。何か違う。
小松駅では特急の通過待ちで15分ほど停車した。これは朝ごはんチャンスである。
ちょうどいいところにそば屋があった。しかし、流石に15分では心許なさすぎる。
仕方ないのでコンビニでおにぎりを買った。こういうものに手を出してしまう辺り、北陸の海産物に対する恋慕の情が伺い知れる。ペロリと美味しく頂いておいてなんだけれど、やっぱこれはカニではないよね。
余計に食欲が増してしまった。ごちそうさまは、まだしていない。
福井県
福井は一瞬だった。例えば寝ている間に通り過ぎてしまったのだったら瞬き一回なので字義としては間違っていない。しかし一瞬であったのにも関わらず、空腹感はぼくを苛む。
福井駅には駅そばもコンビニも改札の前にあるのだが、乗り換え時間は10分。流石に無理である。手前側が真っ暗になってしまった写真を撮りなおす余裕もないくらい忙しく感じる間隔なのだから。
カニ食べたいなあ、ソースカツ丼食べたいなあ、おそば食べたいなあ。
敦賀で乗り換え待ちが20分程度発生するも、駅そばはない。お腹が空いたのであればコンビニで何か買えば良いのだがもう駅そばしか目に入らなくなってしまっていた。これが良くなかった。
滋賀県
近江塩津駅にて30分弱の乗り換え待ちが発生。だめだ! もう倒れそうだ! 極限まで腹が減っている。ここは琵琶湖の西と東を分ける交通の要衝、きっと何かあるでしょう!
売店すらなかった。それはそれとして歴史を感じさせる見た目の駅である。
そして米原へ。普段名古屋からだと1時間ちょっとくらいで着けるのに移動時間だけなら10時間以上はかかっている。ぼくはたまたまこのルートで来ているが、どうしても米原に行きたい人はこの方法でアクセスするしかなかった(day1参照。前日は東海道線は関ヶ原どまりだった)のだと考えるとなかなか大変である。
(実際は新幹線が走っていたのでそんなことはない)
ここまでずっと雪景色だったが近江八幡の辺りから雪のゆの字も見当たらなくなってきた。
そして草津。乗り換え時間は30分越え。電車から降りたらベンチでコンビニ弁当を食べている人がいた。文明のにおいがする。
うおお! そば屋だ! 遂にやったぞ! 時間は既に14時を越えている。仮に朝ごはんをちゃんと食べていたとしてもペコペコな時間だ。
ああ、透き通るお出汁に身をたゆたえたなめらかなうどんよ。今はより一層光輝いて見える。あっ、やっぱりきみ関西風だね。そばそば言ってたけれど関西風の肉うどん見たら食べたくなっちゃった。
結局、北陸で北陸らしい食事をしなかったのは心残りであるものの、次の楽しみが増えたと思うことにしよう。
お腹が満たされてすっかりいい気分である。普通列車ではあるものの気分はグリーン車だ(色もグリーン)。
たかが食事でこんなに汲汲とせずとも、乗り換えで一本見送るなりなんなりすればいい話ではあるのだが、この先のことを考えると一歩でも先に進んでおきたかったのだ。
三重県
夜を過ごすのはインターネットカフェでいいと思っていたが、正直なところ、この先インターネットカフェがあるエリアにちょうどよく夜たどり着けるとは思えないのである。
であれば、適当なところに宿を取ることになるのだが、ちょうどいいところでちょうどよく宿が空いていなかったりする。特急などを駆使してうまくやればなんとかなってくれるのではないかと探してみるも、これもまたうまくいかない。
結果、本当はもっと進めるものの今日は和歌山県に入ったところで宿を取ることにした。つまり三重県は通り抜けることになる。
柘植から亀山駅まで。亀山駅には名古屋行きの快速が停まっていた。今日通ってきたところに共通しているのが、名古屋行きの列車が必ずあることだ。
それだけ、名古屋が中部エリアにおいて中心的な役割を果たしているということなのだろう。言葉で言えば、都市のクラス的に当然のことではあるものの、体感できたのは旅のお陰だと思う。
多気駅で乗り換えて、和歌山の新宮までいく列車に乗る。新宮は紀伊半島の右側にある、三重と和歌山の県境にある駅で、今日の目的地だ。もう今日のミッションは終わったも同然。そう思っていた。
ここからが長かった。17時台に乗って新宮に到着したのは21時台。大体4時間普通列車に乗りっぱなしだったことになる。
また辛いのが、トンネルの多いこと多いこと。現代社会に順応したぼくとしては通信が行えないと何もできないのである。普段なら何かしら暇潰しアイテムを持って出るのだけれど、今回は荷物を軽量化して臨んでいるため、ガラガラの社内で天井のシミを数えて過ごすハメになった。よく掃除が行き届いた天井だった。
それと、乗ってる列車が鹿に衝突してしまったのだけれど、これの影響が大きかった。普段の紀勢本線はうまいこと列車同士がすれ違えるようにダイヤが組まれているのだと思うのだけれど、あちこちの駅ですれ違い待ちが発生していた。
この辺のことはなかなか辛い。普通列車の辛さは承知の上で18きっぷを使いながら移動しているものの、恐らく辛い区間トップクラスではないだろうか。しかも夜なので景色もへったくれもない。
ちなみに特急に乗れば時間半分で到着するとのことである。まあ今回は紀伊半島というのはほとんど山なのだ、という知見を身を持って得られたのでよしとしよう。
今回、紀伊半島をぐるっと回るルートを取っているが、実はこの回りかたじゃなくてもいけそうな気がしている。大幅にロスしていることに気付いてしまったが気にするのはやめにしよう。紀伊半島ぐるっと一周するのも今回の目的のひとつだった、そうだろう?
和歌山県
そして和歌山県の新宮に到着する。今日はここまで。
まだ紀伊半島の大半を残している状態なので不安しかないが、紀伊半島を横断する鉄道はないので大人しく半島をぐるっと回るしかないのである。
まとめ
今日は6県通り、8県制覇したことになる。こうして見てみると、東側に空路か海路で飛ぶことが丸分かりな塗りかたである。どこからどう飛ぶのか、可能性は色々あるので想像して楽しんで貰うと良いかもしれない。
このページをかいたひと:藤盛仁輔
ライター。このサイトでは半年で日本二周したときに訪れた場所についてなどをかいています。